蓮華〜流レルママニ〜
バニラシェイクを急がしそうに飲む未央を見て、口元を緩ませながらも、私は静かに言った。
「ねぇ、未央? 天海先パイ…って覚えてる?」
その言葉に、未央は驚いたような様子で顔を上げた。
「天海先パイって、あのバスケ部の天海先パイ!?」
「そう」
「…そんなの覚えてるも何も…忘れる訳ないじゃん?流奈の初恋の人でしょ?」
何を今さら、というような口調で目を見開く未央は、私の顔を不思議そうに見た。
「だからぁ、初恋じゃないってば!」
「あ〜、ハイハイ、初恋"もどき"ねぇ〜」
ケラケラと馬鹿にしたかのように笑う未央。
落ち込んでる私の気持ちを上げようとしてくれてるのか、
はたまた素なのか…、わかんないけど、
神妙な面もちの私の雰囲気を察してよねぇ〜!! 真面目な話をしようとしてんのにっ…
「ゴメンゴメン。そんな分かり易い顔しなくていいじゃ〜ん!…何か言いたい事、…あるんでしょ?」
そう言って、キリっと真面目な顔を私に差し出す未央。
でも、しっかりとバニラが口の周りに付いてます。
「昨日さぁ、沙耶チャンが事故に遭って、それを聞いた私は、未央の家から天明総合病院に行ったじゃん?」
「うん…」
「…それでさぁ、色々大変だったんだけど…沙耶チャンが包帯グルグルで、翔サンも包帯グルグルで…」
「それ、さっき聞いた」
口元の違和感に気付いた未央はサラリとバニラをナプキンで拭った。そして真面目な顔で、「それから何かあったの?」と視線を投げる。
「昨晩は、凄〜いどしゃ降りでさ、私は傘も差さずに外に出たんだよ」
「流奈…、アナタは話しに脈絡ないし、口下手だから要点だけでいいよ。むしろ、それでお願いします」
ペコリと頭を下げる未央。
ムカッ。未央のヤツ…
まぁ、しょうがない…か。
「あのね、天海先パイに会った…いや、病院の外で…見かけたんだ…」