real world
私は大馬鹿者だ。


人を傷つけてばかりいる。


そんな私は嫌いだ。もっとも、好きな自分なんてないけど。



「ん…」


目が覚めた。


ここは…私の住んでいる安アパートだ。


−ガッチャン!−


えっ!誰か居るの?



「あー。おたま落としちゃった。洗わないとな…」



聞き覚えのある、適度に低い声が台所から聞こえてきた。


私はふらつきながらも立って台所を覗こうとした。


狭いアパートだから、そんなに距離はないはずなのに、うまく歩けないからか、台所までの通路が長く感じ、そのまま途中でうずくまった。




−苦しい…!


『−人殺し!−』



今も私に蹂躙している人間達の声が頭の中で響く。



『−苦しいなら消えればいい。−』


『−どうしてそれを今までしなかった?−』


『−必要ない、お前なんか消えればいいんだ!−』




−やめて…いや!





『−早く、死ねばいいのに。−』




−いや!今はここに居たいの!そばに居たいの!




『−生まれてこなきゃよかったのに。−』




その言葉が聞こえた瞬間。


「ーーーーーーっ!」



声にならない絶叫をした。


それが今の私にとって、最高の『助けて』だった。


ばかだな。


こんな小さな声で気付く訳ないじゃん。



「−花音?−」




嘘…


そこには、1番求めていた人の顔があった。
< 101 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop