real world
「泣いてない!あたしはそんなに弱くない!あたしには泣く権利なんかないんだ!」



「泣く事に権利やへったくれもねぇよ。」


「あたしは…!あの子から、みんな奪った!あれだけ傷つけて、ボロボロに、して、あたしには、悲しむ権利なんて…っ!」



友香の瞳から涙が溢れて頬をつたう。1度溢れると何かの線が切れたかのように次々と彼女の顔を濡らしていった。


すべてを友香は自分のせいにしている。


自分だけを責めている。



「馬鹿かお前は。」



本当に、馬鹿だ。


俺は乱暴に彼女の顔を手で拭いた。



「な、何が馬鹿なんだ!」


「あの事件はお前が指示したわけでも実行したわけでもねぇ。そうだろ?」



「でもっ…」


「お前は頭堅すぎ!花音がそんなに信じられないのか?」


「それは…」


「なら、この話はおしまいだ。お前は関係ない。それだけの事だよ。」



そう、それだけの事。


なのに初めてあの事を知ったときはやり場のない怒りを友香にあてちゃったな。



「むしろ、謝るべきは俺の方かな。ごめん」


「なんでお前が謝るんだよ。」


「ん?なんとなく。」


「なんだよ、それ。」


「…やっと泣き止んだか。ほらいくぞ」



じゃないと、俺の本来の目的がヤバイ。



「えっ…どこに…」


「花音のアパート!夏休みの宿題わかんなくてさぁ…」


「…ばか」


「うるさい」


「ありがとう…」






−俺は何がしたかったんだ?



俺は、ただ…





俺はただ、花音みたいに、すべてを抱え込まれるのが嫌なだけなんだ。



親友が、大切な人が、壊れてしまうのが、





とてつもなく








嫌なんだ…






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