real world
−−花音!−−
だれ?
−−花音!−−
聞き覚えのある、優しい声。
ポタポタと私の顔にかかる温かい液体。
「花音っ…!」
「…悠樹君…?」
彼は泣いていた。
まるで、大切な人が死んでしまう寸前なのを見つけたように、私を抱えている。
お人よしだなぁ…
そんな人だから、好きになった。
「泣かないで…」
そっと手をのばして彼の涙を拭う。
泣かないで。
あなたには、幸せになってほしいの。
涙を拭く私の手を、悠樹君はガラス細工かなにかのように優しく握った。
「僕はもう、大切な人が壊れてしまうのが嫌なんだ。だから…」
「だから花音…
壊れちゃわないでよ…」
彼の叫びが私に響く。
でも…ごめんね。悠樹君。
私はきっと、あなたを不幸にしてしまうの。
だから、ごめんね。
あなたが好きだから、
私なんかのために悲しまないで、どうか幸せになって?
私はもう、助けてなんか言わないよ…。