real world
「先生はね、プライベートでも患者さんのお話を聞いてくれるんだ。」


「花音も聞いてもらった事あるの?」


「お母さん達が死んで、もう壊れちゃいそうになった時、飾らずに『じゃあ壊れちゃえ。そのかわり、もっとつらくなるよ』って、言ってくれた。私が今生きているのは先生のおかげなんだ。」



花音は笑っていた。


今まで見た事もないようなとっても優しい顔で。

そんな顔にも恋してしまう僕は相当花音にハマってしまってるんだろうか。



「やー、おまたせ。待った?」


「いいえ。先生、寝なくていいんですか?」


「大丈夫。ちょっとサボってたし。」


「どうしますか?お茶、と言ってもこの近くに飲食店は…?」



不意に十羽先生はキョロキョロし出した。


そして僕にそっと耳打ちする。



「監視がいる。まくから、ついてきて。」


「っ…!?どこに、」



監視…!



「落ち着け。花音ちゃん連れてしっかり付いて来るんだ。見失うなよ。」


そうして、僕、花音、十羽先生の逃走劇が始まった。


< 141 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop