real world
閉じていく。


どうして?


助けて。



「―友香!?どうしたの?」



花音―。



「おや、上杉のご令嬢。どうかしましたか?」



あの人、そうだ。花音の主治医だっけ。


十羽 優先生。



「不安そうな顔ですね。何かあったのですか?」

「友香―?」



気付いてる。私が花音と目を合わせたがっていない事。


なにかを隠している事。

あの娘が気付かない訳ないんだから。


いつだってそうだったから。



「友香…」



お願い。気付かないフりして。いつもあなたが演っているように。




「どーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」



「…は?」




なにが起こったかなんて考えられなくて頭が真っ白になった。


にもかかわらず花音はケラケラ笑っていた。



「花音ちゃん…ここ一応リハビリステーションなんだけど…?」


「あはは。何かわかんないけど、こうやってバカみたいに叫ぶと頭真っ白になって、笑えてきませんか?はははー!」


「…まぁ、そうかもね!」




前田が笑い出す。


恋奈さんが笑い出す。


十羽先生もつられて笑っていた。



本当に真っ白になった。

バカみたいに。


私も、笑った。



花音はどうして、こんなにも…



やって欲しい事を、


言って欲しい事を、



やってくれるんだろう。


どうして、自分の傷を増やそうとするのだろう。

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