real world

悠樹君の妹さんが目が覚めた。と十羽先生から聞いたから、もしかしたら悠樹君が来ているかもしれないというちょっとした願望を持ってリハビリステーションに行ってみた。


確かに彼はそこにいたし、彼の妹である恋奈さんもいた。それに、友香もいた。


だけど3人共暗い顔をして私を見ると友香と悠樹君はぎょっとした。


あ、なんとなく、わかっちゃった。



ちょっとずつ、ちょっとずつ、


壊れていく幻。


真実のカケラ。



気付いちゃったのか。


なら、守らなくちゃ。



真実の中には、私だけがいればいい。



この脆い幻を、壊しちゃいけない。




「―花音?―」




この優しい人を、悠樹君を、傷つけちゃいけない。



「―あの、貴女が、彩野さん?―」



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