real world
寒くて、暗かった。


ふわふわした気分だったけど、良い感じがしない。



『花音…?』



誰?



『花音…』



暗闇の中にぼんやりと悠樹君が立っているのが見えた。



どうしてここにいるの?


『迎えに来た。』



迎え?どこに行くの?帰る場所なんか、もうどこにも無いのに。



『そう、君の帰る場所はないよ。だからね、僕の所に帰っておいで。』



行きたい。でも、行けない。悠樹君を巻き込む訳にはいかない。この前みたいな事に関わらせる事なんて、私にはできない。



『そんなの、どうってことない。』




だめ。貴方は、ここにいちゃいけない。


私は大丈夫。



『大丈夫?そんな言葉でごまかすのやめよう。なぁ頼むよ花音。帰ってきて。もう一度笑って?僕の前で笑って?』



私は、人間が怖い。


だから、きっと貴方も傷つける。


一緒にいられない。





ごめんね。




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