real world
「うぁっ…」


「花音?大丈夫!?花音!返事を…」



返事を、して?


どうか、おいて行かないで。


まるで迷子のように、僕は彼女のかたわらで泣いた。



「ゆぅ…き、くん?」



花音は目を開けた。焦点の合わない目がこちらに向けられていて、ぐったりしている。


なのに、どこか悲しそうで、泣きそうな顔をして言った。



「なかな、いで。わたしは、わた、しは―。っ…あつっ、からだ…」


「暑い…そうか、冷やさなきゃ!氷…なかったら水でもっ…」



考えてみれば救急車も遅い。


呼んでからたぶんもう5分はたっている。


僕は幸い冷凍庫にあった氷をそこら辺にあるスーパーの袋にぶち込み花音の体を冷やした。


あ、泣くだけ泣いたら落ち着いてきたかも。



「なぁ花音。頼っても、いいんだよ?大丈夫。みんな、いなくなるなんて事はないんだから。それでも、1人だと思うんならさ―…」



そう意識を保つのにやっとな花音に話しかけた。自分自身の、決意も込めて。



「僕を信じて。僕は、花音と生きるよ。他でもない、僕のために。」



花音は微妙にほほ笑んでそっか…と、言った。とっても、小さな声で、僕だけに聞こえるように。


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