real world
「悠樹、毎回思うんだけどそれ恥ずかしくないのかしら?」
「恥ずかしいもなにも仕事ですから。皆さん喜んでくれますよ?」
「そういえば、Princeのその口調を設定したのは誰?スカイ・ブルーの社長さん?」
「そう。親父。王子らしく話せって…最初は嫌だったけど慣れると結構楽しいよ?」
そんな会話をしながら、僕達は家に向かった。
愛さんは今度こそ100km以上は出さずに慎重に走っていたけど、ちょっとイライラしてそうな感じだ。
「恋奈ちゃんは、いつ退院出来そうなの?海斗君のこと、思い出せた?」
「いや、思い出したかと思ったら次の日に忘れてたり、その繰り返しでね。脳には異常は無いんだけど…退院はまだ先になりそうかな…」
花音は僕の言葉を聞いて暗い顔をした。まるで、十羽先生の葬儀でしていた時の様な顔。
「…ねぇ、悠樹君。」
「どうした?…怖いのか?」
「怖い…そうかも。私のせいで、誰かが殺されるのは、もう無理…。」
「恋奈が心配?」
「もう悠樹君には、家族を失って欲しくないから…もう、大切な人がいなくなるのは、嫌なの。」
大切な人がいなくなる。
家族がいなくなる。
恋奈には、消えて欲しくない。
「そう、だね…。」
そのためにも、今の僕に出来る事をしなくては。
1番大切な、大好きな彼女を守るためにも。