real world
『―ごめんね。―』
夏休み最後の日に、花音は俺と友香に電話で言った。
久しぶりに聞いた花音の声はおびえていた。
『―ごめんね。今まで、本当にごめん。私なんかのせいで、巻き込んでごめんね。―』
ごめんね。ごめんね。ごめんね…
通話中ずっとごめんねを繰り返していた。
どうして花音が謝るんだ?
悪いのは結木と東郷の夫人だろ!?
おじさんとおばさんだって、恋奈さんだって、十羽先生だって、桐恵さんだって、死なずにすんだじゃないか。
どうして?
どうして?
どうしていつも、
神様は花音の大切な人達を奪っていくんだろう。
「あやまんなよ、花音。違うだろ!なんで!そうやって全部自分のせいにするんだよ!」
謝らないで。
大丈夫。
俺は花音の味方だから。
17年間ずっと。
これからも。
だから、
「謝るなよ。違うだろ?」
言うべき言葉は謝罪じゃない。
『―ありがとう。―』
それだけで俺は頑張れるから。