real world
しばらくして祖父は口を開いた。
「お前がその年で、そこまでの決意をさせたという花音さんに感謝しないといけないな…」
皮肉っぽくそういった。
だけど嫌な感じはしなかった。
まるで、『わしにそれだけの決意があったなら…』そう言っているようにも聞こえたから。
「上杉家と結木家は昔から水と油だった。商人気質の上杉家。なによりも身分と誇りを愛する結木家。
面識がないのはその名残。
上杉の人間は結木の人間を厭い結木の人間は上杉の人間を蔑んだ。
そんな両者を仲立ちしようとしたのが、現結木当主・結木 相楽。
わしと相楽は仲がよくて…だから、ある日知ってしまった。
奴が東郷の婚約者と付き合っている事を。
もちろんかなうはずもなく2人は別れた。
だが相楽は知らなかった。
もうその時すでに東郷の婚約者・千代さんの中には子供がいた。
東郷の家はそのことを門外不出にし、生まれた桐恵さんは東郷の娘として育てられた。