real world
結局、最初に着た純白のふわふわした生地のワンピースになった。


「じゃあ、また明日。…って花音。お前そういえばバイトは?」


「…またクビになっちゃった。噂が広がって。」

またか。


「なぁ花音。もう諦めてうちのバイトやらないか?」


花音のバイト先では必ずある噂が流れる。


すなわち、



花音は殺人犯である。と


「だめ。大丈夫。何とかするから。」


「どうするんた?もうこの町じゃ見つからないぞ。」


「どうにかするよ。心配しないで。」


いつも1人で頑張ろうとしないで。


たまには頼ってよ。


直人のことだってそうだ。


昨日直人がメールで知らせてきたんだから。


でも、言えない。


「そっか…頑張りすぎるなよ。」


もしものときは、頼ってきて構わないから。


「うん。じゃ、明日の10時にね。」


「じゃあな」


そう言って、別れる。


言えない。


頼ってなんて。


言ったら、きっと彼女は壊れてしまうから。


1年前のあの時のように。
< 34 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop