real world
「ハイじゃあまず最初に…手でもつなぐ?」


疑問形!?


「どのつなぎ方で?」


「ん?つなぎ方に種類があるのか?」


「わかんないねぇ…あ。じゃあ悠樹君は知ってるのか。物知りだね!」


何この無知の集団。


「こうするの!」


何となく彼女の手を握って(?)やった。


小さくて、華奢な手だった。


ひょっとしたら壊れてしまうかも。


「あ…え!?悠樹君?」

赤くなる彩野にほほ笑みかける。本物の笑顔を。

―大丈夫。大丈夫だから。―


耳から放れないあの言葉。


「悠樹君!」


あ、危ない。ちょっと頭がトリップしてた。


「あの…まだつなぐの?」


「あぁ!ごめん嫌だった?」


忘れてた。




ブロロロロロロ…―



「ちっ、もう来やがった。早いな。」


「えーとじゃあ、よろしく。花音。」


「あ…はい。」


そのとき、僕は初めて彼女の名前を呼んだ。


そのときは、気付かなかったけれど。
< 39 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop