real world
「悠樹君!遅刻するよ~」


「大丈夫だよ。車だから。」


そうやって微笑む彼は、少しづつ本当に笑うようになった。


「もう、大丈夫なの?」

「だぁい丈夫!気にしないで!」


笑顔をつくる事は得意だ。


「あ…彩野。ハイこれ。」


「何?…ハンカチ?」


なんで。


「泣き後ついてるよ。」

…うそっ!


慌て取り出した鏡に写った自分の顔を見ると、


…本当だ。恥ずかしい。

「謝らなくていいから。」


「…。」


どうしたんだろう。急に。


いつもと違う様に見えるのは、私の気のせいだろうか。


「彩野ー?ついたよ。余裕で。早く行こう。」


「えっ?あ、うん。ありがとう。」


「それでは、お二方。お気をつけて。」


車を降りたとたんに、登校中の生徒の視線が集中した。


そうだった。


あぁ、大事な事を忘れていた。

私達がさっきまで乗っていた車、


ベンツだった!
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