real world
パーティーなんて出ない。そう親父に言ったはずだった。


なのに。


『友香さん。お久し振りですね。また綺麗になられました。』


うるせぇこの金持ちのボンボンが。


「そうですか?ありがとうございます。武田様も随分と貫禄がつきましたね。」


『いやだなぁ、貫禄なんて。まだ28ですよ。』


私にとったら十分じじぃだっての。


「あぁ、そうでしたわ。ご当選おめでとうございます。」


『どうもありがとう。』

どうせろくでもない政治家になるのは目に見えてるけどな。


『友香様、お父様がお呼びです。』


「今行きます。それでは、失礼します。武田様。」


あぁ何で私がじじぃどもの話し相手なんだ。


親父の居場所は確か玄関だ。


直々に客を迎えている。

近道をするために、人気のない控え室がある通路を使う。


ロビーを通れば人がいっぱいだろうから。


『―あなたはいつもそうだ!いい加減にしてください!―』


控え室からだ。なんだよもめごとか?


『―ふん、私のおかげで今のポストがある事を忘れるな。口を謹め。―』

この声…うちの会社の幹部の声だ。


『―それはそうですけど、まさかあなたが…―』

『―彩野を殺したのは惜しかった。ただ、私は自分を守っただけなのだよ。―』


今、なんて―?


『―どう言おうとあなたは犯罪者だ!あんな…良い人を殺すなんて…ッ!

一年前のあの日に!―』

『―実際に殺したのは私じゃない。あの方の雇われた殺し屋だ。―』


『―あの…方?―』


『―…と…の…だよ。―』


だんだん、声が耳に入らなくなる。


―…殺し屋…?


一年前、


あの日。


彩野


花音の父親はうちの会社のエースだった。


そして、殺された『彩野』は1人しかいない。


私は逃げた。


そのまま手洗いに駆け込んで、うずくまった。


―殺したのは惜しかったー


―だが、自分を守るためだった―


ふざけるな。


自分さえよければ、人を殺しても良いって?


耳から、声が離れない。
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