real world
「―…わかりません。私には、わからないんです。」



見えないフり。


聞こえないフり。


それが一番良い方法。今までだってそうだった。

大丈夫。間違ってない。


「…悠樹?帰って来たの?隠れてないで、こっちに来なさい。」



えっ!聞かれた?ていうか何て言えば良いの!?

「あ、えぇっと、おかえり…?」


やばい。ずれてるよ返事(?)


「ちょっと、何か言う事あるでしょ?どう。これ。」



めーぐーみーさーん。
余計な事言わないでよぅ…。恥ずかしい。



「えっと、あの、やっぱ似合わないよね。私には」



あーうー。困ってるよー。


もとからあんまり華やかなの似合わないしなぁ。


「う…ううん。似合ってる。」


「ありがとう。」


見えないフりはとても楽。



「綺麗、だから。」


「え…」



でもね、どうしてかな。あなたには効かないの。

見えないフりが苦しいの。言えない。


―『ばいばい』


言いたい。


―『そばに居て。』



「かわいい。」


「あ、ありがとう…」



気付かせられるの。あなたといると。


見てしまうの。


この気持ち。だけど、


あなたの為に。


見えないフりをしていよう。


どうか、幻の中で幸せでいて。


お願い。


他にもう、望みません。
< 83 / 330 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop