real world
「愛さんはね、父様の再婚相手。兄さんはあまり信用するなってよく言ってる。」


恋奈は自分の部屋へ俺を案内してそう言った。



「再婚相手?にしては、ずいぶんと若くなかったか?」



20代後半ぐらいの気がしたんだけど。(喋り方はおいといて。)



「親戚達が無理やり…ね。捜して来たの。で、ちょうど嫁行きが決まらなくて困っていた愛さんの家に話が転がり込んできたわけ。」



昼ドラみてる気分だ…。セレブ(?)ってわからねぇ。



「母様はね、」


「ん?」


「母様はね、自殺だったの。」


「へ…?」


「1年前にね、原因はわからないけど。」



自殺?子供を置いて逝ったのか?


「遺書は?何か手紙とか…」


恋奈は首を横に振った。

「突発的だったらしいの。ある日急に屋上から…兄さんは、母様が親戚達にいじめられていたのを知って、あんなふうに…」



恋奈は泣いた。


そういえば、さっき悠樹が言っていたな。



『恋奈はね、母様が死んでから、1度も人前で泣いていないんだ。だからね、泣かせてあげて。君の前でだけでも。』



1年分。


恋奈は優しいから。兄貴とおなじように、泣かない様にしていたんだ。


俺は恋奈を抱き寄せた。

「1年分。気が済むまで泣けばいい。俺はいつでもそばにいるよ。恋奈。」



君が望むならいつだってかけつける。


泣いてもいいんだよ。恋奈。
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