real world
気付いた。


いや、予感が当たったのか?


どっちでもいい。俺にとっては不愉快なだけだから。


4人で教室に帰る途中、花音の顔が赤い事に気が付いた。



「花音。熱でもあるのか?赤いぞ。」


「え?大丈夫だよ?」


「そうか?」


「うん。」



俺の隣りで小さくて丸い花音の頭がゆらゆら揺れていた。

「ふらふらじゃん。やっぱ、熱あるんじゃねぇか…」


顔が赤い理由はそれ以外にもあるんだろうけど。


「保健室行こう。熱があるよ。」


その他の理由=悠樹は花音の赤くなる顔に気付きもせずに花音の手を握った。



「いっいいよ。大丈夫。いつもの事だから、ね?」


(本人にはそんなつもりはないが)花音は可愛らしく首をかしげて悠樹をのぞき込む。


悠樹は『うっ…』と言って固まってしまった。


でたな。必殺天然ぶりっ子。



「おいおい…可愛らしく首かしげてもダメなものはダメ。行くぞ。」



花音の腕を引っ張る。



『おーい!西!早く来い!欠席扱いにするぞ!』


げぇ…出席日数ギリギリなんだよな…



「直人、上杉行きなよ。僕が連れて行くから。あとで連絡聞かせてね。」

「えっ、ちょっ…悠樹!?」



持ってかれた。意外と独占力強いなあいつ。



「いこーぜ。担任がうるせぇし。」



友香がめんどくさそうにため息をついて教室に向かった。


―お前の負けだって。


暗にそう言っているのだろう。



勘のいい女だ。





不本意だし、不服だし、

不愉快だし、不安だけど、



花音は大切な人だから、

花音が幸せなら、


彼女を悠樹に任せてやってもいいかもしれない。
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