突然現れた王子
「ケイタくん。本当の名前がケイタなの?」
ケイタに優しく問いかける母親。
「いや…名前も分からないんで、アユにつけてもらいました」
そう言ってケイタはあたしを見た。
「そう…アユ、いい名前つけたね」
「へへっ、ありがと」
あたしは照れくさそうに笑った。
ケイタも隣で笑っていた。
「ケイタくん。あたしたちみんな、ケイタくんの家族だからね!
遠慮なんてしなくていいんだよ?」
「カヤちゃん…」
姉の言葉に、また涙を流すケイタ。
もうケイタは立派な、家族の一員だった。