突然現れた王子
「アユ……その子は…?」
ケイタを見ながら母親は恐る恐る問いかけた。
あたしは助けを求めるようにケイタを見るけれど、
じっと一点を見つめて口を開こうとはしなかった。
「えっと……友達…住むところがなくなっちゃって、しばらく置いてほしいって……」
苦しい言い訳だとは分かっていた。
けれど、他に何も思いつかず、こう言うしか仕方がなかった。
バレるだろうと思っていたが、
母親は両手を合わせてケイタを見て言った。
「あら、それは大変ねぇ…好きなだけいてね」
あっさり受け入れる母親。
こういう、何の疑いもしないノーテンキなところが、
良いと思うこともあるが不安だったりもする。