夢の欠片
「たけし、宿題やった?」


「いや、やってない。ひろとは?」


「俺もやってない」


騒々しいざわめきの中から、小学生のものだと思われる声がはっきりと聞こえてきた。


「まさやならやってんじゃね? おーい、まさや! 宿題やった?」


「やってねえ!」


やるべき宿題を終えていないのか、焦って答えを求めているのが分かる。


「じゃあ……こうたは?」


「やってねーよ」


「なんだよ。誰もやってないじゃんか。れんやは?」


「やってない」


「うわー……もうだめだ。説教が……」


「みんなやってないなら大丈夫だろ」


「連帯責任で私も被害受けるじゃん。仕方ないから見せてあげる」


「おー! ゆき、センキュー」


「あ、俺も!」


「これで叱られなくて済むぜ!」


ようやく目的のものに辿り着き、誰もがそれにすがりつこうとした瞬間、手遅れのお知らせが鳴った。


キーン コーン カーン コーン


歓喜の声が、一斉に悲鳴や悔しがるような声に変わり、大人の怒声が響き渡った。


それから間も無くして、視界は大きな光に包まれていった。
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