夢の欠片
第二章【黒い男】
先ほどの真弓の様子から、これから由梨に起こされることはなさそうだと判断した羚弥は、帰りに目覚まし時計を買おうか思い悩んでいた。
起きるたびにけたたましいアラームが鳴る朝か、静かな朝の代わりに反省文やら説教やらを受け続ける生活か。どちらを選ぶかと言われると、なぜか静かな朝を選びたくなる羚弥だった。
『……何だあれ』
結論は後で出そうと決めた羚弥の目に、怪しげな男の姿が映った。黒いスーツにサングラス。そんな格好のいかにも怪しんでくださいと言わんばかりの男が複数名集まっていた。
『やべえな……』
思わず彼らに怖れを感じた羚弥は、足早に学校へ向かっていった。
「おお、羚弥」
学校に着き、教室に入った羚弥の元に、学が駆け寄ってきた。
「見たか? あの黒い男達」
羚弥は、あれか、と先ほどの男達を思い浮かべて頷いた。
「見た見た。マジで何なのあれ」
「本当さ。びびって目を合わさないようにして歩いたわ」
えっ、ビビったの? と羚弥は瞬時ににやっと表情を切り替えた。
「うるっせえ! あんなの道にいたらビビるに決まってんだろ!」
「そうだよなぁー」
「どうした? 急に素直になっちゃって。いつものようにいじってこないのかい」
「いや、別に。てか、いじってほしいの? ふーん、そうなんだー」
「い、いや……」
キーン コーン カーン コーン
これからいじりまくろうと考えていた羚弥の気持ちとは裏腹に、ホームルームを始める知らせのチャイムが鳴った。羚弥は残念がりながらも席に座り、他の生徒たちも一斉に席に着いた。その直後、扉が開き、担任の山辺が入室した。
「おはよう」
その挨拶が合図となり、日直は普段通りの一連の動作を始めた。そして、着席が終わると、山辺が少し険しい表情をして連絡を告げた。
「先生も詳しくは分からないが、黒いスーツにサングラス、体型は比較的がっちりした男がこの地区に何人もいるそうだ。今、警察が密かに調べているらしいが、もしかしたらテロとかの可能性もあるからな。近づかないように。親を殺した犯人も捕まってないし、世の中は物騒だ。注意するんだぞ」
心当たりがある生徒が多いのか、その連絡が終わった後、教室全体がざわつき始めた。羚弥は俺と学だけじゃなかったんだな、と周りを見回し、何もなければいいがと表情を曇らせた。
その男達が一体何者なのかは分からなかったが、羚弥は何かが心に引っかかった。
『由梨が外に出ない原因って何だ……?』
授業が始まって周りも静まる中、羚弥はそのことが何の関連性も無ければいいなと心から願っていた。
起きるたびにけたたましいアラームが鳴る朝か、静かな朝の代わりに反省文やら説教やらを受け続ける生活か。どちらを選ぶかと言われると、なぜか静かな朝を選びたくなる羚弥だった。
『……何だあれ』
結論は後で出そうと決めた羚弥の目に、怪しげな男の姿が映った。黒いスーツにサングラス。そんな格好のいかにも怪しんでくださいと言わんばかりの男が複数名集まっていた。
『やべえな……』
思わず彼らに怖れを感じた羚弥は、足早に学校へ向かっていった。
「おお、羚弥」
学校に着き、教室に入った羚弥の元に、学が駆け寄ってきた。
「見たか? あの黒い男達」
羚弥は、あれか、と先ほどの男達を思い浮かべて頷いた。
「見た見た。マジで何なのあれ」
「本当さ。びびって目を合わさないようにして歩いたわ」
えっ、ビビったの? と羚弥は瞬時ににやっと表情を切り替えた。
「うるっせえ! あんなの道にいたらビビるに決まってんだろ!」
「そうだよなぁー」
「どうした? 急に素直になっちゃって。いつものようにいじってこないのかい」
「いや、別に。てか、いじってほしいの? ふーん、そうなんだー」
「い、いや……」
キーン コーン カーン コーン
これからいじりまくろうと考えていた羚弥の気持ちとは裏腹に、ホームルームを始める知らせのチャイムが鳴った。羚弥は残念がりながらも席に座り、他の生徒たちも一斉に席に着いた。その直後、扉が開き、担任の山辺が入室した。
「おはよう」
その挨拶が合図となり、日直は普段通りの一連の動作を始めた。そして、着席が終わると、山辺が少し険しい表情をして連絡を告げた。
「先生も詳しくは分からないが、黒いスーツにサングラス、体型は比較的がっちりした男がこの地区に何人もいるそうだ。今、警察が密かに調べているらしいが、もしかしたらテロとかの可能性もあるからな。近づかないように。親を殺した犯人も捕まってないし、世の中は物騒だ。注意するんだぞ」
心当たりがある生徒が多いのか、その連絡が終わった後、教室全体がざわつき始めた。羚弥は俺と学だけじゃなかったんだな、と周りを見回し、何もなければいいがと表情を曇らせた。
その男達が一体何者なのかは分からなかったが、羚弥は何かが心に引っかかった。
『由梨が外に出ない原因って何だ……?』
授業が始まって周りも静まる中、羚弥はそのことが何の関連性も無ければいいなと心から願っていた。