夢の欠片
第三章【想い】
『拳銃やべえよ!』


俺は、黒い男達が持っている物騒な物を見た瞬間、逃げるようにして走り出していた。


『どうする、どうする俺!』


おそらく拳銃を持っていることを知っているのは俺だけだ。何か自分にできることはないだろうか。


俺は確実に危ないことが起こるだろうと予想していた。


『先生に知らせるのが賢明か、それとも混乱を避けるために内緒で警察を呼ぶのが賢明なのか』


動揺し、あれこれ考える俺に、何者かがぶつかった。そして、重い金属が落ちる音が鳴り響いた。


『拳銃……』


ぶつかってきたのは黒い男だった。落ちたのは拳銃で、それを見た俺は心の底から震え上がった。


「ああ、ごめん」


黒い男はごく自然な動作で、落とした物を拾い上げた。その時、震えている俺に気がついた。


「……これ? これはね、護身用というか……昔、今捜している人がさらわれたことがあってね、それ以来持つようになったんだ」


俺は返事をすることができなかった。


「もし単なる家出だったとしても、俺達は事故や殺人、誘拐とかの可能性を考えて捜し続けるのさ。……そうは言っても、もう一年も捜し続けてるんだけどね……あいつは結構美人だから、さらわれても気持ちは分かるような気がするし……おっと、俺達に時間はないんだ。こうしている間にも苦しんでいるかもしれない。じゃあな!」


男がそう言って走り出そうとしたその瞬間、俺はとっさに質問した。


「何で一年も行方不明の人を捜し続けるんですか?」


男は一瞬止まってその問いに答えた。


「実は二週間前に一度見つかってるんだ。だから生きていることが分かったのさ」


俺は唖然とした。


『もしかしたら、本当に怪しいやつじゃないかもしれない』


俺は立ち上がった。そして、特に急ぐわけでもなく、のんびり歩いて教室に戻った。


キーン コーン カーン コーン


教室に入った瞬間、一時間目開始を知らせるベルが鳴り、俺は焦って席に着くのだった。
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