夢の欠片
珍しく授業中は起きて過ごし、いつしか昼休みとなっていた。


俺は昼食を取り出し、学と共に食べることにした。そこに、真理が調査報告をしにきた。


「ねえ、かなり有力な情報が掴めたわよ」


「え!? あの黒い男の?」


「そうそう。ちょっと隣に来て」


「ああ。分かった」


俺たちは隣の一年二組へ向かった。


真理は窓側の席にうつむいて座っていた女子に声をかけた。


「陽菜、話してくれる?」


「あ、うん。でも、何でこの人達にも話さなきゃいけないの?」


「あ、ああ、それはいいから」


「まあ、いいけど」


陽菜という人物が話し出し、俺たちは心を引き締めた。


「あの黒い男の人達はね、ある家庭のボディーガード兼執事みたいなもので、本当はここにいるような人達じゃないの。多分、その家庭の娘が家出して必死に捜してるんだと思う」


話した内容を一つ一つメモにまとめながら、真理は質問をした。


「その娘って知り合い?」


「うん。元同級生。その子は優奈っていうんだ。ものすごくお金持ちでね、優しい人だったんだけど、いじめられててね……」


「いじめ?」


俺はその単語、行為が大嫌いだった。


「うん。優奈は他の人に合わせようとして、同じゲームを買ったり、流行りの物を身につけたりしてたらしいんだけど、金持ちはいいよなって妬まれて避けられるようになったんだ」


「ひでえ話だ……」


学は顔をしかめた。


「それで、いじめられたら転校をひたすら繰り返して、三年生になりたての頃かな、私がいる中学校にも転校してきたの。それでね、私と仲良くなったのと同時にまたいじめられることになって、お互い支え合ってたんだけど、ちょうど一年前くらいの暑い時期に、私に『もういいから』って言い残して姿を消しちゃったんだ……」


陽菜は今にも泣き出しそうな顔を浮かべていた。


「私ね、一生懸命捜したんだよ? でも……どこにもいなかった。一時期自殺したんじゃないかってことで黒い男の人たちも捜索をやめたんだけど、また再開してるってことは……どこかで優奈を見かけてんじゃないかな」


「……なあ、その優奈っていう女の子、俺も捜していいか?」


「え?」


陽菜は俺を見つめた。


「そもそもそいつは俺たちと同じ年なんだろ? だったら高校生じゃん。中学校とは違うんだ。ここに入れば俺たちがいじめなんかさせない。なあ、学」


「当たり前だろ」


陽菜は一粒涙をこぼし、微笑んだ。


「ありがとう」


「礼は見つけてからだ。真理、お前も捜すよな?」


「当たり前よ。新聞部だし、情報集めは誰よりも得意なつもりよ」


「よし、授業はいいや。学、行くぞ!」


「おう!」


俺たちは学校を飛び出していった。
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