夢の欠片
初めての登校ということで、俺たちは一緒に行くことにした。


「さて、行くぞ。行ってきます」


「行ってきます!」


「行ってらっしゃーい」


登校中、何気なく思ったことを口にする。


「こうして遅刻せずにいられるのも由梨のおかげだよなー」


「目覚まし時計買わないから起こしてあげてんじゃん!」


「いやー、なんかそれほど重要でもないからいっつも忘れちゃってさー」


「重要!」


「ですよねー」


そういえばなんだかんだで目覚まし買ってなかったな、と一瞬思ったが、次の瞬間には『まあいっか』で全てを片付けてしまう。


「今は由梨がいるからさ」


「う、うん……」


突っ込まれると思ったが、意外にも顔を背けられてしまった。


学校が見えてきた時に、ふと転入生がいきなりクラスに入るのはおかしいから、どうするんだろうと思った。


「由梨は学校に着いたらどうするんだ?」


早速訊いてみたが、由梨もよく分からないようで、首を傾げて答えた。


「うーん、転校する時はいつも必ず職員室に行ってたから、今回もそうする」


「ふーん。頑張れよー」


「うん」


それからすぐに学校へ到着し、職員室まで由梨を送ると、俺は教室へ向かった。


「羚弥おはよう!」


学が異常なテンションで迫ってきた。


「しっしっ」


「ちょっ! 挨拶しただけなのに酷くね!?」


疲れるわーと思いながら鞄を机に置く。


「あのな、大ニュース! 転入生がここに来るらしいぜ!」


「え?」


ガラララララ


学の言う通りだった。扉が開き山辺と一緒に現れたのは、正真正銘、由梨の姿だった。


『まさか俺と同じクラスとは……』


俺は思わず苦笑しながら席に着いた。


山辺が黒板に「咲森優奈」と書いて、教卓に両手を置いた。


「これからこのクラスで一緒に勉強する、咲森優奈さんだ。皆、仲良くしてあげてくれ」


「……よろしくお願いします」


由梨が頭を下げると、男子からも女子からも「可愛い!」という歓声が次々に上がった。


まあ、確かに……


以前まで無かった最後列の窓側の席に由梨が座り、騒がしいホームルームが始まるのだった。
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