夢の欠片
「高橋、挨拶終わったら先生のところに来てくれ」


「分かりました」


男性の声に反応する、俺の声。少年の頃の声ではないから、中学生くらいの記憶だろうか。


「号令頼む」


最初に先生と名乗った男性がそう言い、クラスの皆に続いて俺も「さようなら」と言った。


それから棒を持ち上げ、前の方に持っていくと、ガタンガタンと音がした。


そして、棒を押していき、何かを背負うと、俺は歩いていった。


数秒歩いて立ち止まると、先生と名乗った男性の声がした。


「お前のお母さん大丈夫か?」


「AVMという病気だそうです。今は右半身麻痺になって、ずっと頭を痛がってる状態です」


俺は瞬時に今の先生と俺の会話を解釈した。母さんが病気。確かにそういう内容だった。


「そうか……頑張れよ。何かあったら先生に言うんだぞ」


「はい」


それからまた歩き、廊下に出たのか、生徒たちのざわめきの音が大きくなった。


「れんやー、帰ろうぜー。ちょうどひろしも来たし」


「今日はしゅんたに雪玉ぶつけて帰ろうぜー」


その直後、白い光が辺りを包んでいった。
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