夢の欠片
目を開けると、自分の部屋の天井が目に映った。


「ああ、朝か」


明るい。ただそう思った。


制服のままだったので、俺は起き上がり、特に何もすることなく食卓へ向かった。


「あ、羚弥。おはよー。今日も早いねー」


「うん。おはよ」


母さんの手際の良い包丁の音と共に聞こえるテレビの音。俺は何気無くその画面を見た。


そこに映る、近くのコンビニ。


「昨日の午後八時頃、両親を殺害し、コンビニで強盗を続ける高橋裕也容疑者が……」


そこに映し出される高橋裕也という人物の顔。その瞬間、ドクンと心臓が動いた。


「ああああああああああ!!!!」


いろんな情報が一気に戻ってきた。自分が高橋連夜であること。兄であるお前をずっと憎み続けてきたこと。その憎しみを人に向けないために、恋愛も友情も家族も捨て、家を飛び出したこと。


「ああああああああああ!!!!」


同時に、病気で弱っていた母さんと、その介助のストレスで虐待気味となっていた父さんを兄が殺したんだという事実を知り、俺の怒りは最大となっていた。


「羚弥! どうしたの!」


父さんの虐待じみた暴力は、母さんが病気になったから仕方ないと耐えてきた。そして、必死に母さんを介助して、率先して家事でも何でも手伝った。お前は何も手伝わなかったが、俺はずっと、ずっと頑張ってきたのに!


「くっそぉぉおおお!! なぜだ!!」


あの時殺しておけば! こんなことにはならなかったかもしれないのに!


「何すんの! 羚弥!!」


俺は母さんの手から包丁を奪い取った。


「けりをつけてくる」










もう、憎しみしかなかった。
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