金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
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ソメイヨシノ
――――春。
新しい教室。
新しいクラスメイト。
新しい教科書のにおい。
ワクワクするはずの季節に、私はもうこれから先の一年間を憂鬱に思ってため息をついていた。
偶然、席が一番後ろなのはありがたい。しかも、窓際。
席替えが行われるまではとりあえず毎日、窓の外を見て過ごそう……そう思いながら、机にひじをつく。
視線の先で、満開を少し過ぎた校庭のソメイヨシノが、はらり、はらりと散っていた。
桜を綺麗だと思えていたのは、一昨年までだった。
今の私に、散りゆく桜の花びらは、何の感情も呼び起こさない。
きっと、私はこれからもずっと、花を愛でることをしないだろう。
きっと、これからもずっと、恋をしないのと同じように――――。
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