金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「……ああ」
「なんで……」
私も有紗も情けない声を出したのは、また曽川先輩がボールの持ち主になってしまったからだった。
先生の表情も、今までで一番焦っている。
このまま……終わっちゃうの?
そんなの、いやだよ……
お願いだから神様、先生に反撃のチャンスを下さい――……!
きゅ、と床を鳴らして曽川先輩がシュートの体勢に入ったとき、誰かが私と有紗を押しのけて体育館に入ってきた。
「響ーーーっ!!!!」
耳をふさぎたくなるようなキンキン声。
先輩と同じような明るい髪色をした、派手な女子生徒が私たちに背を向けて仁王立ちしていた。
「今日は私とお昼ご飯食べる約束でしょう!?こんな所で何遊んでるのよ!!」
「ああ〜っと、そうだっけ。ごめんね?すぐに終わらせるから――――」
「隙ありっ!!」
先生が派手な女子に気を取られていた先輩の手から、ボールを奪う。
「やった!取った!先生!ボール取った!」
「うん、うん!恩ちゃん、シュート外すなよ……!」