金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
一人が走る距離はわずか100メートル。
あっという間にアンカーが見えてくる。
より大きく腕を振って、ラストスパートに入ろうとした私だったけど……
突然の目眩に襲われて、足がもつれた。
やばい、転ぶ――――!!
そう思ったときにはもう遅くて、私はずざざ、と膝を地面にこすりつけて派手に転んだ。
「おおっと、一位が転んだ!二位が後ろから迫る!!」
その実況放送で我に返り、私は起き上がって再び走り出す。
足、痛いけど……
バトンだけは渡さなくちゃ……
かなりペースは落ちたけれど、私は最後の力を振り絞ってアンカーの男子にバトンを繋ぐことができた。
「いたた……」
トラックの内側の芝生に倒れ込むように座り、アンカーの姿を目で追う。
私のせいで詰められていた二位との距離はぐんぐん離れ、私たちのクラスは無事に、優勝を果たした。
「良かったぁ……」
肩の荷が降りたような気がしてほっとため息をつく私の肩を、誰かが叩いた。