金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「三枝さん」


「……はい」


「嘘はだめです」


「え……？」


「また何か悩んでいるんじゃないんですか？それとも僕には言えないことですか？
……先生、ちょっと寂しいです。三枝さんはもう僕を信頼してくれたものと思っていたのに」



先生はそう言って、がっくり首をうなだれた。


……先生のことは信頼してますよ。

でも、言えないことだってあります。

ただの信頼よりもっと大きな好意を、あなたに対して抱いてしまったから……



「……生理、なんです」



私はわざと小さな声で言った。


……こんなの、卑怯かな。

だって、本当のことは言えないんだもん。

先生だって、きっと聞いたら困るに決まってる。



「それでお腹痛くて……でも、もう治ったので大丈夫です」


「……そうでしたか。ごめん、女の子になんてことを言わせてしまったんだ僕は」



どこまでも優しい先生。

そのうろたえる姿にも、きゅんとしてしまう自分が居る。


……ただ、想うだけ。


想うだけだから。


まだしばらくの間は先生のこと、好きでいさせて下さいね――……