金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「もしかしたら、恩ちゃんも千秋のこと……」
自転車を止めて、有紗が呟いた。
その先は言わない。
でも、言われなくてもわかってしまう。
ふっと視線を上げると、誰かの家の庭に、ザクロの花が咲いていた。
できることなら、淡いピンク色程度の恋心で留めておきたかった。
でも、私の気持ちはあの花のように……きっと、もう、情熱的な赤色。
「有紗、どうしよう……」
「……?」
「私……すごく、好きみたい……先生のこと。有紗が言ってることが本当ならいいって、願っちゃってる……」
相手は、担任の先生。
こんな気持ち、だめなのに。
きっと辛い恋なのに。
気持ちを自覚してからたったの半日で、こんなにも……先生が恋しい。
「恩ちゃんに直接聞ければなぁ……」
「そ、それは絶対に無理!」
「だよね……」
結局この先どうしたらいいか解らないまま、私たちは再びだらだらとペダルをこぎ出した。