金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
あの雨の中で先生から聞いた話は、本当なら誰にも話さない方がいいのかもしれないけど、一人で抱えるにはあまりに大きくて重たかった。
だから私は夜寝る前に、珍しく自分から有紗に電話をした。
『――――大切な人、かぁ……恋人のことなのかねぇ』
「うん……たぶん」
『でも、その言い方だと死んじゃった……ってことだよね』
「そうみたい……だけど今でも彼女を待ってるって。
やっぱりこの間有紗が言ってたことは、何かの勘違いなんだよ」
『そうかなぁ』
……そうだよ。
もしかして先生も私のことを好きかもなんて、今日の先生を見てたら絶対に言えない。
先生は今でもその人を愛しているというのが、痛いくらいに伝わってきたもん。
『……それで、千秋は諦めるの?』
諦める……私もそれは何度も考えた。でも、何度考えても答えは同じ。
……私はどうしたって、先生のことが好きなんだ。
「それができたら……電話してない」