金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
あーあ、もう着いちゃった……
見慣れた我が家が目に入ると、急に名残惜しさが押し寄せてくる。
ずっと隣を歩いていたけど、結局先生を助ける方法はわからないままだ。
本当に私なんかに、なにかができるのかな……
ため息をついて顔を上げると、家のポストから茶色い郵便物がはみ出しているのが見えた。
……この時間に配達されるなんて珍しいな。
そう思いながらそれを引き抜くと、封筒の表に書かれていた宛名にもっと驚いた。
“三枝千秋様”
私あて……?
ひっくり返して見ても、差出人の名がない。
よく見ると切手も貼っていなくて、直接ポストに入れられたみたいだ。
「お手紙ですか?」
「はい……たぶん」
封筒の上から中身に触れてみると、なんだか固くてぶ厚い。
「じゃあ僕はこれで。また明日学校で……」
「待ってください!」