金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「…………?」
大声で先生を呼び止めた私を、先生が不思議そうに見つめる。
……嫌な予感がした。
切手も貼らずに直接家に届けられた、差出人不明の封筒。
その中身の大きさや形や手触りはまるで……
「これ……代わりに開けてもらえませんか?」
もしかしたら普通の郵便物かもしれない。そうであって欲しい。
でも、自分でそれを確認するのは怖かった。
先生は何かを感じ取ったらしく、黙って私から封筒を受けとると、それを器用に開けていく。
そして封筒から出てきたのは、やっぱり便箋なんかじゃなくて。
「これは……」
送られてきたのは、数十枚の写真の束。
先生は数枚それを見ると、私に差し出す。
「撮られた覚えは……?」
「ありません」
通学途中の私。
有紗と寄り道して、何か食べている私。
お母さんを手伝って、洗濯物を取り込む私……
私の日常が気持ち悪いくらいに、そこに凝縮されていた。