金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「…………?」



大声で先生を呼び止めた私を、先生が不思議そうに見つめる。


……嫌な予感がした。

切手も貼らずに直接家に届けられた、差出人不明の封筒。

その中身の大きさや形や手触りはまるで……



「これ……代わりに開けてもらえませんか?」



もしかしたら普通の郵便物かもしれない。そうであって欲しい。

でも、自分でそれを確認するのは怖かった。


先生は何かを感じ取ったらしく、黙って私から封筒を受けとると、それを器用に開けていく。

そして封筒から出てきたのは、やっぱり便箋なんかじゃなくて。



「これは……」



送られてきたのは、数十枚の写真の束。

先生は数枚それを見ると、私に差し出す。



「撮られた覚えは……?」


「ありません」



通学途中の私。

有紗と寄り道して、何か食べている私。

お母さんを手伝って、洗濯物を取り込む私……


私の日常が気持ち悪いくらいに、そこに凝縮されていた。


< 153 / 410 >

この作品をシェア

pagetop