金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「誰が、こんなこと……」



恐怖で声を震わせながら言うと、先生がもう一度写真をじっくり見始めた。

そして何枚目かを見たときにはっとした表情になり、今度は封筒の表を観察する。



「もしかして……」


「心当たり、あるんですか?」


「うん。もし僕の予想が当たっているなら、そんなに怖がる必要はないかもしれない」


「…………?」



先生の言っている意味がわからなかった。

こんな写真を送りつける人が、まともだとは思えない。



「これ、借りてもいいかな」



写真を封筒に戻しながら聞く先生に、私はコクリとうなずいた。

あんなの家に置いておいたらきっと何度も見てしまって、怖さばかりががいたずらにあおられそうだったから。


< 154 / 410 >

この作品をシェア

pagetop