金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「真実がわかったらすぐに報告するから、それまで待ってて下さい。きっと大丈夫だから……そんな顔しないで?」



私、そんなに情けない顔しているのかな……

ぼんやりそんなことを考えていたら、先生がゆっくり私の頬に手を伸ばした。


だけど、触れられる……と思った瞬間、その手はぴくりと震えて私から離れていってしまった。



「……帰ります。この写真のことはあまり気に病まないで、しっかりご飯を食べて寝てくださいね」


「…………はい」



先生の手を待って緊張していたほっぺたの皮膚が、一気に緩んだ気がした。



安心したから?


がっかりしたから?


……たぶん、後者だ。


もしも先生があのまま私に触れたとしても、きっとそれはただ私を安心させるためであって、特に深い意味はないのに。


< 155 / 410 >

この作品をシェア

pagetop