金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「真実がわかったらすぐに報告するから、それまで待ってて下さい。きっと大丈夫だから……そんな顔しないで?」
私、そんなに情けない顔しているのかな……
ぼんやりそんなことを考えていたら、先生がゆっくり私の頬に手を伸ばした。
だけど、触れられる……と思った瞬間、その手はぴくりと震えて私から離れていってしまった。
「……帰ります。この写真のことはあまり気に病まないで、しっかりご飯を食べて寝てくださいね」
「…………はい」
先生の手を待って緊張していたほっぺたの皮膚が、一気に緩んだ気がした。
安心したから?
がっかりしたから?
……たぶん、後者だ。
もしも先生があのまま私に触れたとしても、きっとそれはただ私を安心させるためであって、特に深い意味はないのに。