金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
日曜の午前中、自分の部屋でごろごろしながら雑誌を読んでいると、お母さんが扉をノックして言った。
「千秋、電話よ」
「電話?誰」
友達なら家電じゃなくて携帯にかけてくるはず。
そう思って、首をかしげる。
「恩田先生よ。待たせたら悪いから早く来なさい」
先生……?
もしかして写真の送り主がわかったのかな。
すぐに雑誌を放り投げてリビングに行き、変な声にならないようにひとつ咳払いをしてから私は保留を解除した。
「……もしもし」
『もしもし、こんにちは。お休みのところごめんなさい』
先生の声がする……
電話なんだからそれは当たり前だけど、休日、受話器越しに聞く先生の声が新鮮で、しばらくそのことに浸ってしまった。
『昨日、写真の送り主に会ってきました』
その言葉でに現実に引き戻され、私は受話器を強く握りしめながら尋ねた。
「誰……なんですか?」
『杉浦くんでした。うちのクラスの』