金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
杉浦、くん……?
パッと顔が思い浮かばずに記憶を探っていると、そういえば彼はずっと不登校だということを思い出す。
『前に彼の家に伺ったとき、学校には行きたくないけど外に出て写真を撮るのが好きだと言っていたんです。立派な一眼レフも見せてくれました。
それで、初めは空や植物、近所の犬や猫を撮っていたみたいなんですけど……最近人物を撮りたいと思うようになったらしくて』
「でも……なんで、私なんですか?」
『……それは僕のせいなんです。前に“三枝さんって女の子がきみが学校に来るのを待ってる”と言ったことがあって。それで彼は三枝さんがどんな子なのか気になって……自宅の近くまで行って写真を。
上手く撮れたから本人に見せたくなったけど、方法がわからなくて名前も書かずにポストに入れてしまったそうです』
つい、撮った……ってこと?
それにしては枚数が多かったし、一度や二度じゃなかった気がするけど……
『きみを好きだそうです』
「え……?」
『被写体として、なんて言ってごまかしてましたが、写真を見ればわかります。どうやら杉浦くんはきみに恋をしているようです。』