金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
『すごい!それってデートじゃん!』
やっぱりあの文面では誤解が生じたらしく、興奮気味の有紗からはメールでなく電話で返事が来た。
「デートの誘い…って感じじゃなかったよ。でも、海に行けば先生をもっと深く知れる気がする。私、頑張るよ」
『千秋が自分から頑張るって言うなんて……それ以外にもなにか嬉しいこと言われたんじゃないの?』
嬉しいこと、って言うほどではない。
だけどほんの少し、先生が前より心の中を見せてくれるようになったから、今はそれをもっともっと深くまで見せてもらえるようになりたいって気持ちが私を積極的にさせているのかもしれない。
「……有紗こそ、最近先輩とどうなの?」
『うわ、質問返しときたか。うーん、いつも通りではあるけど、今年の夏休みはやばいかも……』
「やばいって?」
『え、と……だからその、先輩と……しちゃう、かも』
消え入りそうな声を聞いていると、電話の向こうで赤くなる有紗が見えるようだった。
そっか……高校生だもん、そういうこともあるよね。先輩は、年上だし……
年上っていうなら、先生の方がもっと、だけど……
と、そこまで考えたら勝手に頭の中に先生が服を脱いだ姿で現れて、私は慌てて首を振り、その妄想を消し去った。