金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
『……千秋。今恩ちゃんとのこと考えたでしょ』
「かっ……考えてない!」
『まぁ、いいんじゃない?恩ちゃんのこと好きな証拠だよ』
親友っていうのはこういう時に困る。顔を見せない電話での会話でだって、嘘はあっさり見抜かれてしまう。
有紗にからかわれつつ電話を切ると、ぼふんとベッドに仰向けになった。
考えるのは、やっぱり先生のこと。
海に、なにがあるんだろう……
大嫌いってことは、きっとつらいことがあったんだよね。
きっと、“一番大切な人”に関するとてもとても悲しいことが……
その痛みを取り除くなんて、私にできるんだろうか。
私と一緒に海に行ったからって、何も改善されないかもしれない。
それでも、諦めないで側に居たい。そう思うことは、迷惑かな……