金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

ヒマワリ


夏休み前の定期テストは上々の結果だった。


ただ、古典だけが平均点ぎりぎりで、これはまずいなぁと自分でも思っていたところに恩田先生からの呼び出し。

海に出かける話をなかったことにされてしまったらどうしよう……なんて思いながら、私はカウンセリング室の扉を開けた。



「失礼します……」


「ごめんね、わざわざこんなところに呼び出したりして。教室ではできない話だから」


「……大丈夫、です」



もともと暑い部屋だったけれど、先生の言葉を聞いて一気に全身から汗が噴き出した。

テストのことじゃない……きっと、あの話だ。



「三枝さん、八月のお盆のころはご両親の田舎に帰ったりする?」


「あ……いえ。父の休みがいつも八月の後半なので、帰るのは今年もそのころだと思います」


「そっか。それなら大丈夫そうだね。できれば海に行くのは、故人の魂が帰ってくる、お盆のころがいいと思ってるんだ」



故人……

その物悲しい響きに、ズシンと胸が重たくなった。

やっぱり、デートだなんてとんでもない。

先生は亡くなった大切な人のために……海へ行くつもりなんだ。


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