金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
……軽蔑なんて、するわけがない。
だけど私は首を横に振ることすら忘れて、頭の中をぐるぐる回る疑問に気を取られていた。
きみに、恋をした……
きみって……
もしかして、私……?
「……本当は、こんなこと言うつもりはなかったんです。僕には小夜子を一生愛する義務があると思っていたから、このヒマワリを買って、供えて、小夜子への愛を誓うつもりでした。」
地面に置いた花束に触れながら、先生が言った。
私はまだ放心状態に近かったけれど、先生の気持ちが知りたくて耳だけは澄ませた。
「だけど……本当にそれでいいのかって思う僕も居て、それをさらに深く考えようとすると、一番に浮かぶのはきみの顔で……
ああ、この子は僕にとって特別なんだと、気付いたんです。
だから、この花を小夜子に渡すことはできない」
先生はそう言って、今度は両手で強く強く、私を抱き締めた。
乾きかけていた涙が再び溢れ出し、私も先生の広い背中に腕を回した。