金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「それから……夏だからと言って不純異性交遊はだめです」
「……私が、すると思うんですか?」
「きみにその気がなくても、男は狼ですから。くれぐれも気を付けるように。本当は僕が24時間見張っていたいくらいなんですから」
……なんか今、ものすごく恥ずかしいことを言われた気がする。
24時間見張ってたいなんて……先生スイッチ、もう切れちゃったのかな。
それなら、私もひとこと言いたい。
「先生」
「はい」
「私が好きなのは……先生、だけですから」
それだけ言って車を降り、玄関の前で振り返ると先生は少し赤くなって苦笑してた。
「ありがとう、またね」
窓を開けて最後にそう言ってくれた先生。
私は去っていく車の後姿を、見えなくなるまでずっと見ていた。
恋愛ってなんとなく、愛される方が幸せというイメージだったけれど、先生に対しては、逆のことを思う。
先生のこと、これからたくさん幸せにしてあげたい。
私にできることなら、なんだってしてあげたい。
こんな気持ちは初めてだけど……これがきっと、人を好きになるって、ことなのかな。