金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

切なかった夏休みが嘘のように、学校では毎日先生に逢えるのが嬉しくて、私は毎日ふわふわと過ごしていた。


机の上で頬杖をついて、ぼんやりと先生を想うのが休み時間の定番。


その日もそうしていたら、目の前にいきなり雑誌を持った有紗が現れた。



「千秋ー、色ボケ中悪いけど、そろそろこれ、本気で考えない?」



相変わらず先生とのことは内緒にしているし、有紗からも聞いてこないけれど、彼女の中ではすっかり私たちは恋人同士らしい。



「色ボケなんてしてないもん……」



そう呟きながら差し出された雑誌を見ると、表紙には透き通った青い海と真っ赤なハイビスカスの写真が。

タイトルは、“沖縄まるわかりガイド”



「なにこれ……」


「なにって……もしかして修旅のこと忘れてるの?」



修旅……?ああ、そういえばそんな行事もあったような……


そっか……行先、沖縄だっけ。





………………沖、縄?




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