金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

「千秋、どこ行くの?」


「うん、ちょっと……」


「シュノーケリングとグラスボートならどっちがいい?」


「うーん、どっちでも!」



班の皆には悪いけど、本当に体験学習なんてどうでもよかった。


教室がざわついている今ならきっと、先生と話ができる……

私の頭の中は、それだけだったから。



「――先生」


「どうしました?もう、三枝さんの班は決まったんですか?」


「そうじゃなくて……先生、平気なんですか?修学旅行……」



できるだけ小さな声で、先生に尋ねる。

先生は柔らかく笑って、こう答えた。



「心配してくれてありがとう。だけど今なら、大丈夫な気がします。こうして自分を気にかけてくれる人がいる。それを忘れないようにすれば、きっと」



……本当、かな……

今はそう思っていても、実際に現地に行ったらもっと……色々思い出しちゃうんじゃないのかな……


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