金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜

カトレア


突き抜けるような青い空と、エメラルドグリーンの海。

それが交わる水平線は深い群青で、ずっと見ていると吸い込まれそうな感覚に陥る。



「きれい……」



10月初旬の沖縄は、まだまだ気温の高い夏のような気候。

だけど、その自然が作り出した青のグラデーションが私の胸に爽やかな風を運んできて、不快な暑さは全くない。



……私にとっては、とてもとても綺麗な海。


だけど、先生にとっては……



「千秋ー、こっちこっち」



海ばかり眺めてクラスの列から離れていた私を、有紗が呼び戻しに来た。


修学旅行一日目の今日は、空港に着いてからバスで水族館に来ていた。

早くジンベイザメが見たいと興奮する有紗と一緒に館内に入ってゆっくり進むと、一番大きな水槽の前に人だかりができていた。



「私、もっと前で見たいからちょっと行ってくる」


「え、待ってよ有紗……」



……行っちゃった。


私は有紗を追いかけるほどサメに興味があるわけじゃないし、あんな人混みをかき分けてまで近くで見たくない。


大きな水槽だから離れた場所からでも充分楽しめると思った私は、近くにあった壁に寄りかかった。


< 197 / 410 >

この作品をシェア

pagetop