金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
――二日目、シュノーケリングを行うビーチに水着で集合すると、先に着いていた男子の中に初めて見る男の子が居ることに気が付いた。
雑談をする土居くんと小林くんから一歩後ろに下がったところで、しゃがんで白い砂浜をさらさらと触っている。
黒い前髪が長くて顔はよく見えないけれど、腕や足は沖縄に似合わない真っ白な肌をしていた。
彼が、杉浦くん……?
「おー、女子も来たか」
もともと健康的な肌色をした土居くんは、沖縄に来てまだ二日目の朝なのにさらに日焼けした顔から白い歯を覗かせて、こちらを向いた。
相変わらず、爽やかだな……
「おはよう」
普通に挨拶をしたつもりだけど、返事がない。
首を傾げていると、土居くんの隣の小林くんと、私の後ろに居た有紗が同時に吹き出した。
「おまえ、わかりやすすぎ!」
小林くんが、笑いながら土居くんの肩に手を置く。
「ちょっと、こっちにも水着の美女が二人いるんですけどー」
有紗は口を尖らせて土居くんを睨む。
「あ、ああ……悪い」
ばつが悪そうに目を逸らした土居くんは、日焼けをしていても解るほどに、耳まで赤くなっていた。