金木犀の散った日〜先生を忘れられなくて〜
「千秋が沖縄に来てからずっと元気ないの、先生のせいなんでしょ?
今まで二人のことには口を出さないようにしようって思ってたけど……そのせいで千秋が危険な目に遭ったんだから、黙ってられない!」
「有紗、違うよ、先生は悪くない……!」
私が有紗を止めようとそう叫んだ時、病室のドアがガラッと開いた。
「――今の話が本当なら、俺たちも黙ってられない」
「みん、な……」
入ってきたのは、同じ班のメンバー全員だった。土居くんを先頭にして、みんなが先生を取り囲む。
「……三枝になにしたんだよ」
土居くんは、聞いたことのない低い声を震わせながら先生に言った。
みんな、きっと何か誤解してる……私、本当に先生になにもされてないのに。
見えもしない小夜子さんの幻影に怯えて、勝手に溺れただけなのに……
そう説明したくても、小夜子さんの話をみんなに話すことはできない。
私は布団をぎゅっと掴んで、成り行きを見守るしかできなかった。
「……三枝さんが溺れたのは、確かに僕のせいかもしれません」
「先生……!」
思わず声を出してしまった私に、先生は頼りない微笑みを向けた。